第27回 インフルエンザ研究者交流の会シンポジウム
如何にして次のパンデミックに備えるか、また如何にしてH5N1高病原性鳥インフルエンザウイルスの猖獗を抑えるか。これら重要課題の解決に向けた研究・開発を進めることは、私たちの務めです。2009年に出現して、瞬く間に世界に広がったH1N1パンデミックインフルエンザウイルスは、その伝播性は高いものの、ヒトに対する病原性は低いことが確認されました。一般市民やメディアばかりでなく、WHOや多くの研究者と臨床医もウイルスの伝播性と病原性を混同しています。いずれもウイルスと宿主の相互作用の結果ですが、別ものです。パンデミックの第二波、すなわち季節性インフルエンザを起こすウイルスの方が、ヒトにおける感染、増殖能が高いので、ヒトに対する病原性が高いのです。季節性インフルエンザ対策を放置して、新型、新型と空騒ぎを続けるようでは、パンデミック対策は成りません。 H5N1ウイルスに感染したヒトの症例は、2003年から現在までに608を数えます。ニワトリに致死的インフルエンザを引き起こすこのウイルスがヒトからヒトに感染を繰り返し、“新型インフルエンザ”(“パンデミック”のことを指す間違った用語:国会を通っているので、今すぐには、直せない;厚労省説明。)を起こすと、日本で64万人が死亡することが閣議で了承されたとの報道に驚いた専門家は少なくありません。さらにこれを受け、78条からなる「新型インフルエンザ等特別措置法」が私たち専門家の意見を聴することなく、内閣府で、おそらく政治家主導で、起案され、平成24年5月に国会を通過しました。本法は、2009年のH1N1ウイルスパンデミックを含め、過去のパンデミック事例と多くの客観的事実ならびにこれまでの研究成果を十分に検証することなく、一部のメディア情報と偏った科学報告の断片を寄せ集め、誤解と妄想に基づき起案されたものと推察します。本法は、平成25年春から施行されることになっています。したがって、今、本特措法の修正や廃案、あるいは批判を考えても、現実的には意味がありません。しかし、非常事態宣言の下にこれが適用されると、無駄な社会混乱を招くこと必至です。 高病原性鳥インフルエンザ対策の基本は、ウイルス感染を最小限の家禽の被害に止め、当該ウイルスを根絶することによって、食の安全と公衆衛生に寄与することです。パンデミックインフルエンザ対策は、季節性インフルエンザ対策の延長線上にあります。以上の現状認識を踏まえ、本シンポジウムでは、参加者が各々の研究成果と、インフルエンザの克服に向けて私たちがなすべきことについて、忌憚のない議論を交わすことにより、迷走する我が国のインフルエンザ対策を正すとともに、次代のインフルエンザ研究を担う若い研究・技術者を啓蒙できれば幸いです。 初夏の北大に集い、新緑の中で熱い議論を交わしましょう。 第27回インフルエンザ研究者交流の会シンポジウム会長 喜田宏 プログラム(6月4日改訂版)を公開しました。プログラム概要:
交流の会への参加は、ノーネクタイでフランクに話し合えるような 格好でお越しください。
お問い合わせ:北海道大学大学院獣医学研究科微生物学教室 |